脳卒中後遺症では、麻痺や筋肉の緊張、関節の動かしにくさなどにより、「立つ」「歩く」「着替える」「食事をする」といった日常生活の動作が難しくなることがあります。
私は、トレーナー時代から「身体を整えることは目的ではなく、その先にある『動く』ための手段である」という考え方を大切にしてきました。
その思いは、現在の訪問施術でも変わりません。
訪問施術では、マッサージ・はり・きゅうにより、筋肉や関節の状態を整え、痛みや筋緊張の軽減を図りながら、「動きやすい身体づくり」を目指します。しかし、訪問施術だけで、ご利用者様の生活を十分に支えられるとは考えておりません。
大切なのは、ご利用者様の目標に向かって、それぞれの専門職が同じ方向を向き、それぞれの役割を果たしていくことだと考えています。
理学療法士さんは、立ち上がりや歩行など基本動作の改善を目指した運動療法を行います。作業療法士さんは、食事や更衣、トイレ動作、家事や趣味など、その方らしい生活につながる支援を行います。看護師さんは日々の健康状態を見守り、医師は医学的な管理を担います。そしてケアマネジャーさんは、ご利用者様に必要な支援やサービスをつないでくださいます。
私は、その中の一端を担う存在になれればと考え、日々訪問施術を行っています。
例えば、理学療法士さんから「もう少しここが動くと歩行練習につながりやすい」、作業療法士さんから「腕がもう少しこう動けば、着替えや食事の動作につながりやすい」といった目標や身体の状態を共有していただければ、私もその目標を意識しながら、マッサージ・はり・きゅうで身体を整えることができます。
それぞれが別々に関わるのではなく、ご利用者様の目標を共有することで、訪問施術も次の動作につなげるための一つの役割を担えると考えています。
実際の施術でも、ベッドから立ち上がる際に介助が必要だったご利用者様が、
「今日はいつもより楽に立てる感じではないかなぁ」
と笑顔で話してくださることがあります。
こうした小さな変化は、ご利用者様やご家族にとって大きな喜びであり、私にとっても何より嬉しい瞬間です。
ご利用者様には、「もう少し歩けるようになりたい」「自分で着替えたい」「もう一度、自分らしい生活に近づけたい」など、お一人おひとりの願いがあります。
その願いを大切にしながら、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の向上につながるよう、それぞれの専門性を生かして支えていくことが大切だと考えています。
健康保険を利用した訪問施術も、その支援の一端を担う存在になりたいと思っています。
ご利用者様が目標に少しでも近づける方法を、地域の医療・介護に携わる皆様と一緒に考え、実践していきたいと思っています。
「身体を整えること」はゴールではありません。
その先にある「少しでも動けるようになる」「その人らしい生活に近づける」という願いに向かって、これからもご利用者様お一人おひとりに寄り添った訪問施術を続けてまいります。